鼻づまりについて

About Nasal Obstruction

鼻づまりの症状について

風邪や花粉症などをきっかけに鼻づまりを経験された方は多いのではないでしょうか。一時的な粘膜の腫れによるものであれば、内服薬や点鼻薬で改善が期待できます。しかし、薬を使ってもすっきりしない、常に鼻が詰まっている感覚が続くといった場合、鼻の内部構造に原因がある可能性もあります。慢性的な鼻づまりは生活の質にも影響するため、まずは原因を正しく知ることが大切です。当院では内視鏡やCTを用いた検査を通じて、症状の背景を丁寧に確認していきます。

●左右の鼻の通り道の間にある鼻中隔という壁が曲がっている
(鼻中隔弯曲症)

鼻中隔は骨と軟骨でできた壁が芯になっています。骨と軟骨の歪みが原因なので、薬を飲んでも治ることはありません。この鼻中隔の曲がりは決して珍しいものではありませんが、鼻の中を検査しないとわからないので、理由を知らずに長年鼻づまりに悩んでいらっしゃる方が多くいらっしゃいます。

●鼻の粘膜が薬では抑えきれないほど腫れ上がっている
(肥厚性鼻炎)

アレルギー性鼻炎が長年続くと、鼻の粘膜、特に下鼻甲介の粘膜が腫れてしまい、鼻が詰まることが知られています。また、市販の点鼻薬(血管収縮薬)を使い続けていると、副作用で鼻の粘膜が腫れることが知られています。アレルギー性鼻炎の内服薬や点鼻薬を使うと、一時的に鼻の粘膜の腫れが引くこともありますが、根本的に治るわけではありません。

●鼻の通り道がポリープで塞がっている(鼻茸)

慢性副鼻腔炎や気管支喘息の患者さんの中には、鼻の中の粘膜がお餅のように膨らみ、ポリープが空気の通り道を塞いでいる方がいらっしゃいます。ポリープは一旦できてしまうと、なかなか薬で小さくすることは難しく、内服を続けていても鼻閉が改善しません。 鼻づまりが長期に続くようであれば耳鼻咽喉科で一度詳細に検査をし、原因を特定することをお勧めします。

鼻づまりの原因

鼻づまりは、鼻内部の空気の通り道が狭くなることで起こります。さまざまな原因があります。左右の鼻の通り道の間にある鼻中隔という壁が曲がっている、鼻の粘膜がパンパンに腫れている、副鼻腔炎のせいで空気の通り道にポリープができているなどです。これらの理由が複数組み合わさって、鼻がつまっている場合も多く、それぞれの原因に応じた治療を行います。

●健康な鼻の状態

まずは、健康な状態の鼻についてご説明します。ご存知の通り、鼻は空気を吸う、においを嗅ぐという役割を果たしています。そのほかにも、異物の吸入を防ぐバリアとしての役割、吸い込んだ外気を適切な温度・湿度に整える役割を担っています。鼻は、鼻中隔によって左右に隔てられており、かつ、左右の鼻腔にはそれぞれ上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介というヒダ状の構造物があります。ヒダ状構造をしているため空気と接する面積が大きく、わずか8cmほどの短い距離を空気が通り抜ける間に、空気は加温・加湿され肺へと吸い込まれます。

●鼻中隔の曲がり(鼻中隔弯曲症)

鼻の内部を左右に仕切る壁、鼻中隔は、外傷などで曲がることもありますが、人間の成長過程で曲がってしまう方が多いといわれています。その弯曲の度合いが強いと、空気の通り道が狭くなるので慢性的な鼻づまりに悩まされたり、また、額や頬にある副鼻腔と呼ばれる空間の換気が悪くなり副鼻腔炎(蓄膿症)になったりします。

●下鼻甲介の腫れ(肥厚性鼻炎)

左右の鼻腔それぞれの粘膜にある3つのヒダのうち、最も大きいヒダを下鼻甲介といいます。花粉やハウスダストなどのアレルギー物質に反応したりすると、下鼻甲介の粘膜は腫れ、空気の通り道が狭くなり鼻づまりを引き起こします。抗アレルギー薬などの内服や点鼻薬の使用で、腫れた下鼻甲介を縮めることはめざせますが、効果は一時的です。いわゆる花粉症の薬というのは治す薬ではなく、症状を緩和する薬なので、鼻づまりが続く間は継続して使い続ける必要があります。また、市販の点鼻薬(血管収縮薬)も使用するとすぐに鼻粘膜の腫脹を抑え鼻づまりを改善させることが望めますが、継続して使うと逆に鼻の粘膜が腫れてくることが知られているので、長期間の使用には注意が必要です。

●鼻茸(鼻腔ポリープ)

鼻茸とは、副鼻腔炎などにより、鼻の粘膜がぷくっと焼いたお餅のように膨れ上がった状態のことをいいます。空気の通り道をふさぐことで鼻づまりが強くなったり、においがわかりにくくなったりします。ポリープは、一旦できてしまうと、なかなか小さくなりません。お薬を飲んでも改善が見られないようであれば、鼻から内視鏡で覗きながらポリープを切除することもできます。

鼻づまりの検査

CT検査

computer tomography of maxillary sinus. nasal septum deviation

鼻の立体構造を調べる画像検査です。鼻中隔弯曲の程度、副鼻腔炎の有無などの詳細を把握することができます。レントゲンが一方向からの撮影なのに対し、CT検査は360°全周囲から複数の画像撮影をするため、立体的に内部構造を見ることができます。当院のCTは、コーンビームCTというタイプで、耳や鼻など撮影する部位を限局して撮影し、一般病院で使われているCTより被曝量がかなり少ないというメリットがあります。

内視鏡検査

鼻の中に内視鏡を入れ、内部を撮影します。鼻中隔が歪んだり、粘膜が腫れたりしていないか、副鼻腔から鼻汁が垂れてきたり、鼻茸(ポリープ)ができたりしていないかなどを調べるのに用います。当院の内視鏡は直径2.6mmとかなり細いためお体への負担も軽く、高画質デジタル映像で保存されるため、鮮明な画像で病状を確認することができます。

血液検査

鼻づまりの原因となる病気の一つに、アレルギー性鼻炎があります。血液検査を行うことで、アレルギーの有無だけでなく、花粉やほこり、動物の毛など鼻炎を引き起こしている原因物質(アレルゲン)を特定することもできます。

鼻づまりの治療

●鼻中隔の曲がり(鼻中隔弯曲症)に対する治療

鼻中隔は、骨や軟骨でできた壁が芯になってできています。薬を飲んでも、曲がった骨や軟骨を治すことはできず、矯正する手術が必要となります。

●下鼻甲介の腫れ(肥厚性鼻炎)に対する治療

下鼻甲介が腫れることで鼻がつまるので、下鼻甲介の体積を小さくするため3つの方法が挙げられます。

 

1/薬剤による治療

中等度の鼻閉に対し、鼻アレルギーの診療ガイドラインでは、抗アレルギー薬の内服、鼻噴霧用ステロイド薬の使用が推奨されています。当院でもガイドラインに則り、お薬の処方をしております。薬物療法も良い方法なのですが、根本的に粘膜の腫れを治すものではなく、一時的に自覚症状を改善させるためのものなので、年中、鼻がつまっている場合、ずっとお薬を使い続ける必要があります。

また、お薬にも能力の限界というものがあり、あまりに粘膜の腫れがひどいと、お薬を使ったとしても鼻がスッキリ通った感じがしないという方も多くおられます。

 

2/下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術

お薬を使っても鼻が通った感じがしないような高度の鼻閉がある場合、鼻アレルギー診療ガイドラインでも外科的な方法が推奨されています。そのうちの一つが下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術です。

肥厚した下鼻甲介の表面をレーザーで焼灼し、粘膜を軽くあぶった状態にすることで、粘膜を縮んだ状態にします。治療時間は両鼻合わせても5〜6分程度と短時間で済みます。負担が少ない方法ではあるのですが、持続的な効果はなく、個人差はありますが、治療後の状態は数ヵ月~1年程度で変わってきます。花粉症シーズンの数ヵ月間だけ鼻閉が辛い方に適しているように思います。

 

3/粘膜下下鼻甲介骨切除術

鼻の中から内視鏡を入れ、下鼻甲介の芯となっている骨を切除し、肥厚した下鼻甲介の体積を減らすことで鼻の通りを良くすることをめざす手術です。

下鼻甲介骨の中には、くしゃみや鼻汁の分泌に関与する翼突管神経(後鼻神経)が通っているので、本手術と同時に神経を切断すると、くしゃみや鼻汁分泌を抑制する効果も期待されます(経鼻腔的翼突管神経切除術)。根本的に下鼻甲介の体積を減らす手術なので、下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術のように数ヵ月後に元に戻ることは考えにくいです。

また、内視鏡で鼻の中を覗きながら行う手術なので、顔には傷が残ることはほぼありませんし、顔が腫れることも抑えられます。所要時間は、両鼻合わせて1時間程度。鼻中隔矯正術と同時に実施する場合は合計90分程度です。

副鼻腔炎(蓄膿症)とは?

副鼻腔炎とは蓄膿症とも呼ばれる鼻の代表的な疾患で、おでこや頬に空いている空洞、副鼻腔に起こる炎症のことをいいます。

副鼻腔は小さな穴で鼻とつながり、換気されています。風邪やアレルギー性鼻炎が続き粘膜が腫れると、この穴が狭くなり、蓄膿症の名の通り、副鼻腔の中に鼻水や膿がたまります。この鼻水はどろっとした黄色や緑色の鼻水で、なかなか鼻をかんでも外へ出てきません。副鼻腔の中の鼻水は夜寝ている間などに、ゆっくりと時間をかけて喉の方へ垂れ込みます。これを後鼻漏と言います。

また、副鼻腔炎が悪化すると、炎症が起きている場所に一致して、おでこが痛い、頬が痛いなどの症状が起こり、頭痛や頭重感、ご自分の鼻の中が臭いなどの症状が出ることもあります。炎症が続くと、鼻粘膜にポリープ(鼻茸)ができ、空気の通り道をふさいでしまうため、鼻づまりや嗅覚障害などの原因となることもあります。

 

●主な症状

  • 鼻がつまって苦しい
  • 鼻をかんでもかんでもかみきれない
  • ドロッとした黄色い鼻水
  • 頭痛、頭重を感じる
  • 嫌な臭いを感じる

●副鼻腔炎が起こる仕組み

  1. 正常な状態では、副鼻腔は、自然孔と呼ばれる小さな穴で鼻腔とつながり換気されています。
  1. 炎症が続くと、副鼻腔の粘膜が腫れ、自然孔がふさがれます。
  1. 自然孔がふさがると、副鼻腔の中に鼻汁がたまり、換気も悪くなるため、細菌が繁殖します。
  1. 細菌が繁殖すると、ますます粘膜が腫れるため、悪循環に陥ります。

 

●診断と治療法

問診を行い、鼻の内部をみます。鼻の通り道は入口から奥まで8cmほどあり、入口からは奥まで見えないので、診察のために細い内視鏡を用います。副鼻腔から出る鼻汁の性状や、鼻粘膜の状態、ポリープ(鼻茸)の有無などをチェックします。また、副鼻腔炎が疑われる場合は耳鼻科用CTで検査を行います。副鼻腔は顔の骨の中にあるので、副鼻腔の中のことはCTを撮らないと分かりません。副鼻腔炎の程度を評価し、治療方針を決定します。
一般的な副鼻腔炎の場合、抗菌薬等の薬物治療を続けます。しかし、中には抗菌薬だけでは治癒しきらない場合もあります。このような場合は、手術をすることもあります。副鼻腔の手術とは、簡単に言うと、副鼻腔の換気を良くするためのものです。副鼻腔と鼻腔の間にある小さな穴がふさがって換気が悪くなっているので、手術で穴を大きくし、空気の出入りが良くなるようにします。また、穴が大きくなれば、副鼻腔の中に膿汁がたまりにくくなり、かつ、生理食塩水で鼻の中を洗う時に、副鼻腔の中までしっかり洗うことができます。

好酸球性副鼻腔炎とは?

いわゆる慢性副鼻腔炎はバイ菌が感染し引き起こされるのに対し、好酸球性副鼻腔炎はご自身の体質、アレルギー反応によって引き起こされる副鼻腔炎です。鼻の中に鼻茸がたくさんでき、手術をしても再発する可能性が高い難治性の病気です。ステロイドが有用な治療であることが知られていますが、ステロイドをずっと使い続けることは副作用の点で避けるべきであると思われます。

しかし、ステロイドを中止すると、再び鼻茸は大きくなり悪化した状態に戻ってしまいます。現在は、デュピクセント(一般名:デュピルマブ)、ヌーカラ(一般名:メポリズマブ)、テゼスパイア(一般名:テゼペルマブ)などの生物学的製剤が、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対し使用できるようになりました。

もともと、アトピー性皮膚炎や気管支喘息の治療薬として使われており、既存治療で効果不十分な患者さんに限り慢性副鼻腔炎にも使用できるようになりました。当院でも多数の患者さんに対し、再発した鼻茸の縮小や、気管支喘息の改善のために用いています。